令和5年度　生物学　第1種放射線取扱主任者試験　解説と模擬問題

総評
模擬問題
解説

総評

　全30問中、無理問題2問、難問3問
　無理問題が2問しかなく、文章題も易しめなので、今年度の科目では得点源になるか
　ぜひ7割は取っておきたいし、できれば8割以上を得点しておきたい

模擬問題

令和5年度　生物学

国家試験の問題ではなく、模擬問題です
不適切問題がありましたら、ご連絡いただけるとありがたいです

1 / 24

原爆被爆者の調査において、有意な増加が認められていないものはどれか

甲状腺がん

成人T 細胞白血病

急性骨髄性白血病

胃がん

2 / 24

原爆被爆者における全固形がんによる死亡の過剰相対リスクおよび過剰絶対リスクに関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

過剰相対リスクは、被爆時年齢が同じであれば、一般に到達年齢が低いほど大きい。

過剰相対リスクは、到達年齢が同じであれば、一般に被爆時年齢が低いほど大きい。

過剰絶対リスクは、被爆時年齢が同じであれば、一般に到達年齢が低いほど大きい。

過剰絶対リスクは、到達年齢が同じであれば、一般に被爆時年齢が低いほど大きい。

3 / 24

次の標識化合物とそれを利用して標識される生体高分子として、間違っているものはどれか

[35 S] メチオニン－タンパク質

[α－32 P] デオキシシチジン三リン酸－ DNA

[125 I]5－ヨード－2'－デオキシウリジン－ RNA

[3 H] ロイシン－タンパク質

4 / 24

1 Gy のγ 線急性被ばくが生殖細胞に与える影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

細胞死は精細胞より精原細胞に多く起こる。

卵母細胞は被ばく直後（24 時間以内）に体細胞分裂を停止する。

細胞死は卵母細胞より卵に多く起こる。

被ばく後3 週以降に男性女性ともに永久不妊となる。

5 / 24

放射線の組織反応の潜伏期に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

潜伏期の長さは、同じ組織反応であっても生物種によって異なる場合がある。

潜伏期には、組織に変化が見られる場合はない。

潜伏期が長い組織反応は、確率的影響に分類される。

しきい線量が低い組織反応ほど、潜伏期が短い。

6 / 24

活性酸素種に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

過酸化水素は活性酸素種の一種である。

人体には活性酸素種を無害化する酵素がある。

呼吸や代謝などによって生成される。

電離放射線では生ずるが紫外線では生じない。

7 / 24

核医学診療で行われる検査・治療に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

[123 I] ヨウ化ナトリウムは、甲状腺機能検査に用いられる。

[14 C] メチオニンは、脳腫瘍の診断に用いられる。

[90 Y] 抗CD20 抗体は、B 細胞悪性リンパ腫の治療に用いられる。

[99m Tc]MDP（メチレンジホスホネート）は、悪性腫瘍の骨転移検査に用いられる。

8 / 24

腫瘍細胞の放射線感受性に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

照射を複数回繰り返すことにより、低酸素細胞が順次再酸素化して放射線感受性を回復する。

固形腫瘍において、血管からおおよそ70 μ m 以内は放射線感受性が低下する。

低酸素環境下で転写因子HIF1 が誘導され、低酸素環境への適応に機能する。

腫瘍組織には少数の放射線抵抗性の高いがん幹細胞が存在する。

9 / 24

預託実効線量に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

幼児と小児の場合、摂取後70 歳までの期間にわたって毎年均等に割り当てられる。

単位はシーベルト（Sv）である。

成人の場合、摂取後50 年間にわたって積算した放射線量で評価される。

人の体内に取り込まれた放射性核種による長期間にわたる内部被ばくを評価するために用いられる。

10 / 24

多標的1 ヒットモデルおよびそれに基づく細胞生存率曲線（片対数グラフ表示）に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

すべての標的に1 個以上のヒットが生ずると細胞死に至るとの考えに基づいている。

生存率曲線は、高線量域で傾きの小さななだらかな曲線となる。

D 0（平均致死線量）が大きいほど分割照射による回復効果は小さくなる。

D q（準しきい線量）は生存率が37% となる線量である。

11 / 24

医療被ばくに関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

日本における1 人当たり1 年当たりの平均実効線量は、世界平均よりも高い。

線量限度が適用されない。

1 人当たり1 年当たりの平均実効線量は、治療と診断による被ばくの合計で評価されている。

医療従事者が診療業務中に受ける被ばくは含まれる。

12 / 24

ホウ素中性子捕捉療法（BNCTBNCT）に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

核反応により生成されるα 粒子とヘリウム反跳核の高い細胞致死効果を利用する。

悪性黒色腫の治療に有効である。

速中性子が原子核に捕獲される核反応を利用する。

照射前にホウ素を含む薬剤を正常細胞に集積させる。

13 / 24

放射線により誘発される染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

二動原体染色体の出現頻度から、被ばく後の経過時間を推定することができる。

環状染色体は不安定型異常である。

不安定型異常は発がんの原因になる。

γ 線を全身被ばくした場合、二動原体染色体の出現頻度は、線量率によらず、被ばく線量に比例する。

14 / 24

ヒトの胎内被ばくに関する次の記述のうち、正しいものはどれか

着床前期の被ばくでは、死産は増加しない。

胎児期の被ばくでは、発がんのリスクが高まらない。

器官形成期の被ばくでは、胎児期の被ばくに比べて、精神遅滞が顕著に増加する。

受精後4 週までを着床前期と呼ぶ。

15 / 24

日本における自然放射線による被ばくに関する次の記述のうち、正しいものはどれか

経口摂取による内部被ばくに最も大きく寄与する核種は、カリウム40 であると推定されている。

国民1 人当たりの年間平均被ばく線量は2.8 mSv と推定されている。

地上での宇宙線による被ばく線量率は、高度が同じであれば、緯度が高い方が高い。

地上での宇宙線による国民1 人当たりの年間平均被ばく線量は、大地からの放射線による国民1 人当たりの年間平均被ばく線量の約2 分の1 である。

16 / 24

放射線による腸死に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

腸の急性放射線障害が発症する時点で、末梢血中のリンパ球の数は減少しない。

被ばく24 時間後も絨毛上皮細胞は移動し続ける。

脱水や感染症が主な死因になる。

被ばくにより腸管上皮細胞の増殖細胞数が減少する。

17 / 24

放射線照射によって誘発されるアポトーシスに関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

照射後に細胞分裂した細胞では誘発されない。

細胞の縮小と核の凝縮を伴う。

正常なp53 タンパク質により誘導される。

末梢血のリンパ球に誘発されるアポトーシスは、生物学的線量評価に利用される生体応答現象の一つである。

18 / 24

放射線の細胞致死作用とLET に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

低LET 放射線よりも高LET 放射線において、照射後の亜致死損傷の回復が顕著に観察できる。

LET の増加とともに、生物学的効果比が低下するLET 領域はない。

荷電粒子線のエネルギーが高いほどLET は増加する。

LET の増加とともに、酸素増感比が低下するLET 領域がある。

19 / 24

人工放射線に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

大気圏内核実験で放出された放射性核種に起因する、2000 年からの100 年間に受ける被ばくの集団実効線量預託に最も大きく寄与する核種は137 Cs である。

日本における医療被ばくの1 人当たり1 年当たりの平均実効線量は、約0.5mSv であると推定されている。

UNSCEAR2020/2021 年報告における推定では、成人におけるCT 検査1 回当たりの平均実効線量は22～13 mSv 程度であるとされている。

X 線診断の年間集団実効線量では、CT によるものの寄与が最も大きい。

20 / 24

次の記述のうち、正しいものはどれか

分裂能の高い細胞が水晶体の中心部に存在する。

放射線白内障は、腸死のしきい線量より低い線量で生じる。

網膜が変性すると白内障が発症する。

放射線白内障の治療には角膜移植が行われる。

21 / 24

放射線治療に関する次の記述のうち、間違っているものはどれか

C 単位吸収線量当たりの細胞致死効果は、炭素イオン線ではブラッグピーク部でプラトー部より高い。

前立腺がんに対する小線源治療の際に、125 I が用いられる。

電子線は表在性腫瘍の治療に用いられる。

陽子線のRBE は約5 と評価されている。

22 / 24

放射線照射によって細胞に起こりうる現象として、間違っているものはどれか

照射された細胞の近隣細胞にはDNA 損傷は誘発されない。

照射後数世代の細胞分裂を経たあとに突然変異が誘発される。

高線量照射によって、ネクローシスが誘導される。

低線量照射によって、その後の高線量照射による細胞致死効果が軽減される。

23 / 24

RBE に関する次の記述のうち、正しいものはどれか

一般に、高吸収線量域で得られた致死効果におけるRBE は、低吸収線量域で得られた値よりも大きくなる。

DNA 二本鎖切断修復遺伝子を欠損したヒト培養線維芽細胞で得られた致死効果におけるRBE は、正常細胞で得られた値よりも大きくなる。

細胞致死効果と突然変異誘発効果とでは異なる値を示すことがある。

組織加重（荷重）係数を決めるときの基礎データとなっている。

24 / 24

5 Gy のγ 線を急性局所被ばくした場合に起こり得る皮膚変化で最も早く出るものはどれか

乾性落屑

一時的脱毛

一時的紅斑

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解説

　対策ノートで対応できていた問題に関しては特に記載しませんので、下記のページを参照して下さい

生物学　トップページ

・分子レベルの影響・細胞レベルの影響・DNA・染色体レベルの影響・臓器・組織レベルの影響・個体レベルの影響・被曝・生物領域における放射線の利用

　ここからは当サイトが独断と偏見で、難問または無理問題として認定した問題について解説します

問2　難問

　血液への放射線の影響に関する問題
　血液そのものへの照射は頻出だが、この問題は輸血用血液であり、かつ弾かなければならない選択肢が凍結血漿なので難問認定

臓器・組織レベルの影響

(R4.20.21, R3.8.10.11) 組織・臓器名閾線量 (Gy) 耐容線量　 TD5/5(Gy) リンパ球 0.25 ★一時不妊(男) 0.15 ★永久不妊(男) 3.5～6 5～15 一時不妊(女) 0.65～1.5 永久不妊(女) 2.5～6 2～3 腎(腎硬化) 23 肝(肝障害･腹水) 25 小腸(潰瘍･狭窄) 10以上 45 皮膚(脱毛) 3 皮膚(紅斑・色素沈着) 3～6 皮膚(潰瘍形成) 10～白内障(一回照射) 5 白内障(慢性被曝) 8 10 肺(肺炎･肺線維症) 6～8 17.5(全肺)~45(1/3肺), 骨　成長阻止(幼児) 10(幼児) 　壊死・骨折(成人) 60(成人) ★骨髄　造血機能低下 0.5 急性反応 (2～3週間程度で発生) 晩発障害 (数ヶ月～数年で発生) 全身障害放射性宿酔発がん,成長阻害,急性白血病消化器系障害〇〇炎,下痢唾液分泌障害,潰瘍,直腸出血皮膚障害紅斑,脱毛,皮膚炎色素沈着,萎縮,皮膚がん目の障害結膜炎,角膜炎白内障,角膜潰瘍血液障害白血球...

問14　無理問題

　塩基損傷に関する問題
　塩基損傷自体は頻出だが、「APエンドヌクレアーゼ」を知らないと回答できないので、無理問題認定
　対策ノートは対応済み

DNA・染色体レベルの影響

DNA (R5.32, R4.11, R3.31, R2.31) ・デオキシリボ核酸(DNA)の構造　　DNA＝ポリヌクレオチド(ヌクレオチド) 　　　＝(塩基+糖(デオキシリボース)+リン酸)×2本　塩基：A –(2本の水素結合)- T，G –(3本の水素結合)-C 　A(アデニン),G(グアニン)はプリン塩基　T(チミン),C(シトシン)はピリミジン塩基・DNA複製材料：dATP，dTTP，dGTP，dCTP ・DNAの損傷(R2.16,R1.14) 　起きやすい順番≒細胞死への影響が少ない：塩基損傷>塩基遊離>1本鎖切断>2本鎖切断　その他に架橋形成がある　塩基損傷はOH＊によって起こりやすい　塩基遊離はプリン塩基に起こりやすい *放射線特有の損傷というものはない *ピリミジンダイマ：隣接する塩基の共有結合(紫外線による),T – Tに起こりやすいクロマチン　8つのヒストンタンパク質の周りにDNAがおよそ2回巻きついた糸巻きのような形の「ヌクレオソーム」が数珠状に多数連なった構造 DNAの修復 (R5.32, R4.31, R2.31,R1.15) ・DN...

問15　難問

　DNA損傷に関する問題
　頻出の内容だが、出題の方式が難しいので難問認定
　クロマチン構造とかちょっとむずいか

DNA・染色体レベルの影響

問20　難問

　細胞死に関する問題
　「5-ブロモデオキシウリジン」を知らないと正答にたどり着けないので、難問認定
　それ以外は普通の問題

問24　無理問題

　特定座位法というなぞの単語に関する問題
　普通に無理問題
　生物は今年は問14と問24しかなのでさっくりと捨ててしまおう

令和5年度　生物学　第1種放射線取扱主任者試験　解説と模擬問題

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