分子レベルの影響
反応過程の時間的スケール ・物理的過程 (10-19~10-13秒) 照射~電離・励起~ ・化学的過程 (10-12~10-4秒) ~ラジカル生成・反応~ ・生化学的過程 (10-3~10-1秒) ~DNAの損傷~ ・生物学的過程 (100~秒) ~DNAの修復~ DNA損傷の種類 ・直接作用 :DNAの構成原子が放射線に電離・励起され,直接DNA損傷を引き起こす作用 ・間接作用 (R5.13, R5.29(化学), R4.29(化学), R4.9.31, R2.15,R1.28(化学).29(化学)) :水分子が放射線に電離・励起され,フリーラジカルが形成され,これによる生体分子からの水素引き抜き反応によって,DNA損傷が引き起こされる作用 ・水分子の励起 :H2O → ・OH + ・H ・水分子の電離 :H2O → ・H2O + 電子e- ・H2Oによって・OHまたは・Hが生成される 電子e-によって水和電子eaq-が生成され,eaq-によって・Hが生成される ・フリーラジカル :不対電子をもつ原子や分子、イオンのこと 活性酸素種で以下のものがある ...
細胞レベルの影響
ベルゴリー・トリボンドーの法則 (R3.4, R2.32,R1.32) ・放射性感受性が高い細胞の特徴 分裂活発な(細胞周期の短い)細胞 将来長期にわたり細胞分裂を継続する細胞 未分化な細胞 *高感受性の細胞はアポトーシスを起こしやすい 細胞周期による感受性の変化 (R5.31, R4.17, R2.32) ・M期 :分裂期 クロマチンが凝縮して染色体が形成され,染色体の観察が可能となる時期 ・G期:間期 ・S期:合成期 *最高感度はM期の最初 *1細胞当たりのDNA量はG2期にかけて増え,M期で半分になる ・分裂遅延 :分裂を行っている細胞群に対して放射線が当たると最も早期に起こる 照射線量に比例して,G2期が長くなり,10Gyまでは1Gy当たり1時間遅れる ・G0期 :非常に長いG1期初期とも考えられ,正常細胞にも腫瘍細胞にもある ・細胞周期チェックポイント *毛細血管拡張性運動失調 (R4.31, R2.27) :常染色体性劣性遺伝疾患(ATM遺伝子)で,細胞周期チェックポイントがない 放射線照射に対して高確率でがんになる 正常なATMは,DNA損傷チェックポイント...
DNA・染色体レベルの影響
DNA (R5.32, R4.11, R3.31, R2.31) ・デオキシリボ核酸(DNA)の構造 DNA=ポリヌクレオチド(ヌクレオチド) =(塩基+糖(デオキシリボース)+リン酸)×2本 塩基:A –(2本の水素結合)- T,G –(3本の水素結合)-C A(アデニン),G(グアニン)はプリン塩基 T(チミン),C(シトシン)はピリミジン塩基 ・DNA複製材料 :dATP,dTTP,dGTP,dCTP ・DNAの損傷(R2.16,R1.14) 起きやすい順番≒細胞死への影響が少ない :塩基損傷>塩基遊離>1本鎖切断>2本鎖切断 その他に架橋形成がある 塩基損傷はOH*によって起こりやすい 塩基遊離はプリン塩基に起こりやすい *放射線特有の損傷というものはない *ピリミジンダイマ :隣接する塩基の共有結合(紫外線による),T – Tに起こりやすい クロマチン 8つのヒストンタンパク質の周りにDNAがおよそ2回巻きついた糸巻きのような形の「ヌクレオソーム」が数珠状に多数連なった構造 DNAの修復 (R5.32, R4.31, R2.31,R1.15) ・DN...
臓器・組織レベルの影響
(R4.20.21, R3.8.10.11) 組織・臓器名 閾線量 (Gy) 耐容線量 TD5/5(Gy) リンパ球 0.25 ★一時不妊(男) 0.15 ★永久不妊(男) 3.5~6 5~15 一時不妊(女) 0.65~1.5 永久不妊(女) 2.5~6 2~3 腎(腎硬化) 23 肝(肝障害・腹水) 25 小腸(潰瘍・狭窄) 10以上 45 皮膚(脱毛) 3 皮膚(紅斑・色素沈着) 3~6 皮膚(潰瘍形成) 10~ 白内障(一回照射) 5 白内障(慢性被曝) 8 10 肺(肺炎・肺線維症) 6~8 17.5(全肺)~45(1/3肺), 骨 成長阻止(幼児) 10(幼児) 壊死・骨折(成人) 60(成人) ★骨髄 造血機能低下 0.5 急性反応 (2~3週間程度で発生) 晩発障害 (数ヶ月~数年で発生) 全身障害 放射性宿酔 発がん,成長阻害,急性白血病 消化器系障害 〇〇炎,下痢 唾液分泌障害,潰瘍,直腸出血 皮膚障害 紅斑,脱毛,皮膚炎 色素沈着,萎縮,皮膚がん 目の障害 結膜炎,角膜炎 白内障,角膜潰瘍 血液障害 白血球...
個体レベルの影響
放射線の影響 (R4.6(実務), R4.5.22, R3.9.32) 影響 閾値 線量依存性 防護 目標 例 発生率 重篤度 確定的影響 有 有 有 防止 下記以外 確率的影響 無 有 無 防護 発がんと遺伝的影響 (遺伝子突然変異・染色体異常) 確定的影響 発生率は線量に依存し,重症度は線量に依存し,閾値は存在する 確率的影響 ・リスク (R5.7, R4.23) :白血病は絶対リスク予測モデル(線量に比例) 他の固形がんは相対リスク予測モデル ・絶対リスク :単位線量当たりの発生数 →相加予測モデル 年齢にかかわらず影響は一定 ・相対リスク :被ばく集団発生率÷コントロール集団発生率 →相乗予測モデル 高齢で高リスク ・過剰リスク :放射線被ばくに関連したある健康影響の発生率がどれだけ過剰にあるかを示す 過剰相対リスクが0.5なら相対リスクは1.5となる ・過剰相対リスク (原爆被爆者の疫学調査) (R3.7, R2.6,R1.7) 高い順に :白血病>腎盂尿管>乳房>膀胱>卵巣>(食道,胃,結腸,肝臓,胆嚢,肺) 固形がんでは1Gyで0.4から最大1.2程度...
被曝
被曝の統計 (R5.10.11.30, R4.7, R3.13,R2.8,R1.9.11) 被ばく源 世界平均(mSv) 日本平均(mSv) 宇宙線の合計 0.39 0.3 直接電離・光子 0.28 中性子 0.1 宇宙線生成核種 0.01 外部大地放射線の合計 0.48 0.33 屋外 0.07 屋内 0.41 外部被ばくの合計 0.87 0.6 吸入摂取 1.26 ★ラドン及びトロン(222Rn,220Rn) 1.25 0.46 U及びTh系列 0.006 喫煙(210Pb,210Po) 0.01 その他(U) 0.006 経口摂取 0.29 ★40K 0.17 0.18 U及びTh系列 0.12 210Pb,210Po 0.8 14C 0.01 内部被ばく合計 1.55 1.5 自然被曝合計 2.4 2.1 医療被曝 0.6 3.9 全被曝の合計 6.0 ★トリチウムによる被ばく量 (R3.11(化学), R2.9) :自然発生由来>核実験由来>原発由来 ★宇宙放射線は緯度に比例して増加する (R2....
生物領域における放射線の利用
放射線治療領域 (R5.29, R3.29.30, R2.30,R1.30) ・X線 :深部の腫瘍に対して十分な線量を照射できる ・電子線 :表面付近の腫瘍または術中照射に適す ・陽子線,重粒子線 :ブラッグピークの形成により電子線やX線に比べて線量分布が優れている ・ホウ素中性子補足療法(BNCT) :あらかじめホウ素化合物を投与し外部から熱中性子(原子炉)を照射する 10B(n,α)7Liの反応を利用し,α線は飛程が短い(数十µm程度, 細胞数個分), ため正常組織の損傷が小さい ・密封小線源治療 核種 半減期 装置期間 使用法 平均エネルギー (MeV) 192Ir 74.0日 一時 組織内,表面,腔内 0.38 137Cs 30.1年 一時 組織内,表面,腔内 0.66 60Co 5.27年 一時 腔内 1.25 198Au 2.69日 永久 組織内 0.41 125I 59.4日 永久 組織内 0.027 核医学領域 (R2.1,R2.17(化学)) ・インビトロ検査 核種 半減期 崩壊方式 γ線エネルギー 3H 12y β― - 14C 5730y β― - 12...
放射線と生物学について出題される範囲
化学と物理学とは少し毛色が違っており、独自に覚える必要があることが多い
出題方式としては選択問題30問30点、文章問題大門2問30点の計60点
計算問題がほとんど出題されず、知識的にも覚えやすいものが多いので、ぜひ得点源にしたい
無理問題や難問もある程度勉強したのに知らない単語が出た瞬間に切れるのでわかりやすい