相互作用の種類
(R1.14)
相互作用 | 相互作用の相手 | 電子のエネルギー | 発生するもの |
弾性散乱 | 原子(核) | 不変 | なし |
衝突損失 (電離,励起) |
軌道電子 | 減少 | 特性X線, オージェ電子 |
放射損失 | 原子核 | 減少 | 制動X線 |
チェレンコフ効果 | 原子 | 減少 | 青色光 |
・弾性散乱
衝突によって相手粒子の内部エネルギーを変化させない散乱
*ラザフォード散乱
:ごくまれな確率で原子核と衝突しておこす大角度の散乱
・非弾性散乱
衝突によって相手粒子を励起状態にする場合の散乱
・制動放射 (R3.15)
荷電粒子が原子核の電場により制動を受け,そのエネルギーを光子として放出する現象
・チェレンコフ放射
(R5.11, R4.14)
荷電粒子が透明な誘電物質中(屈折率n)を通過するとき,物質中での光の速度(c/n)を超えた速度(v)で移動した場合に,分極によって位相が重なり,可視光(青色)が円錐形状に放出される現象
屈折率nの大きい物質で発生する
発生時間が非常に短く,シンチレーションの発生よりも短い
*電子の場合
:水中で0.26MeV以上で発生
臨界エネルギー:n(V/C)≧1
*チェレンコフ光と荷電粒子のなす角θ
cosθ= c/n ÷ v
*チェレンコフ光を発生させる最小の運動エネルギー[MeV]
(電子の場合)
・核破砕現象(フラグメンテーション)
重荷電粒子では核破砕現象によってブラッグピーク以降にも5~20%ほど線量付与がある
陽電子
(R4.6, R3.27(化学), R3.7, R2.21)
阻止能や飛程など基本的な挙動は電子と同じ
停止時に電子と結合
→ポジトロニウムの形成
→消滅γ線(511keV)を2本以上放出する
・電子対消滅
陽電子と電子が対消滅し,その全静止エネルギー(1.022MeV)を180度対向に放出される2つの光子のエネルギー(0.511MeV)として放出する現象
*電子がない(真空中など)と安定する
阻止能
・阻止能
:単位量当たりのエネルギー損失
・全線阻止能S=Scol+Srad
・線阻止能S
:単位長さ当たりのエネルギー損失[MeV/mm]
・質量阻止能S/ρ
:線阻止能を密度ρで割った値
・電子の水/空気質量阻止能
:深部ほど大きくなる
電子の衝突阻止能
(R4.32)
・線衝突阻止能Scolは密度に比例する
・質量衝突阻止能Scol /ρ
・N:単位体積あたりの原子数
Z/Aの値は物質によって変化しない(≒0.5)ため,S/ρは物質の種類に依らない
ρ:密度 NA:アボガドロ数
Z:原子番号 A:物質の質量
m:電子の質量 v:電子の速度
*Bethe Blochらによって量子論的に求められた
*10MeV以上の場合は密度効果を考慮する必要がある
重荷電粒子の衝突阻止能
(R4.31, R2.31,R1.15.16)
・衝突阻止能Scol (簡略ベーテの式)
電子の放射阻止能
・線放射阻止能Srad
Srad ∝ N×Z2×(E+mc2)
= Z/A×ρ×Z×(E+mc2)
・質量放射阻止能Srad/ρ
Srad/ρ ∝ Z/A×Z×(E+mc2)
Z/Aの値は物質によって変化しないため,原子番号に依存する
重荷電粒子の放射阻止能
荷電粒子の質量が大きいため無視できる
電子の放射阻止能と衝突阻止能の比
(R5.13, R4.31)
Srad/Scol = (E+0.511)×Z÷820
E:電子のエネルギー[MeV]
Z:物質の原子番号
・臨界エネルギー
:同物質においてSrad=Scolとなるエネルギー
飛程
電子の飛程
(R5.14, R2.13.31)
電子線の飛程 R
R=0.5E‐0.3[cm](E=5~50MeV)
=0.54E-0.13[g・cm-2](0.8MeV<E<3MeV)
質量が小さいため,散乱を受ける
重荷電粒子の飛程
(R5.12, R4.31, R1.13)
R≒0.3E3/2
E:荷電粒子のエネルギー
v:荷電粒子の速度
z:荷電粒子の原子番号
m:荷電粒子の原子番号
・最大飛程>外挿(実用)飛程>平均飛程
・質量が大きいため,水中では基本的に進行方向は変わらず,直進する
・停止付近(飛程)で阻止能(比電離)が大きくなる:ブラッグピーク
・陽子の飛程
:水中で200MeVで25.96cm
・ブラッククレーマン則
(R3.16)
未知の物質の飛程R=R0×(ρ0/ρ)×√(A/A0)
R0:既知の物質の飛程
ρ, ρ0:密度
A,A0:質量数
後方散乱
:多重散乱により起こり,薄い試料等での測定に影響を与える
線源支持体が厚い程,原子番号が高い程,影響が大きい
(正比例ではなく飽和係数がある)
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