ベルゴリー・トリボンドーの法則
(R3.4, R2.32,R1.32)
・放射性感受性が高い細胞の特徴
分裂活発な(細胞周期の短い)細胞
将来長期にわたり細胞分裂を継続する細胞
未分化な細胞
*高感受性の細胞はアポトーシスを起こしやすい
細胞周期による感受性の変化
(R4.17, R2.32)
・M期
:分裂期
クロマチンが凝縮して染色体が形成され,染色体の観察が可能となる時期
・G期:間期
・S期:合成期
*最高感度はM期の最初
*1細胞当たりのDNA量はG2期にかけて増え,M期で半分になる
・分裂遅延
:分裂を行っている細胞群に対して放射線が当たると最も早期に起こる
照射線量に比例して,G2期が長くなり,10Gyまでは1Gy当たり1時間遅れる
・G0期
:非常に長いG1期初期とも考えられ,正常細胞にも腫瘍細胞にもある
・細胞周期チェックポイント
*毛細血管拡張性運動失調
(R4.31, R2.27)
:常染色体性劣性遺伝疾患(ATM遺伝子)で,細胞周期チェックポイントがない
放射線照射に対して高確率でがんになる
正常なATMは,DNA損傷チェックポイントの活性化を開始する重要なタンパク質をリン酸化し,細胞周期の停止,DNA修復やアポトーシスを引き起こす
・p53
:がん抑制遺伝子
転写因子としてきわめて多数の遺伝子の発現制御に関わり,細胞周期の抑制,アポトーシスを引き起こす
細胞死
(R4.32, R2.32,R1.31)
・分裂死
:増殖死ともいわれ,数回分裂して死に至る
無限の増殖能を失った状態
巨細胞を生じる
「芽細胞」「がん細胞」などが行う
・間期死
:「神経細胞」「末梢リンパ」などが行う
正常細胞でも大量の放射線を浴びることで起こりうる
・アポトーシス
(R4.12, R3.20, R2.18,R1.18)
細胞の能動的死で,低LETの放射線で起こりやすく,リンパ球や幹細胞,がん細胞の一部で起こる
1,細胞形態
:「細胞の縮小」
「クロマチン凝縮」
「核断片化」
「アポトーシス小体」
2,生物学的変化
:「DNA断片化」
「カスピパーゼ活性化(タンパク質分解)」
「マクロファージに貪食される(炎症を起こさない)」
・ネクローシス
細胞の受動的死で,高LETの放射線で起こりやすい
特徴
:「細胞(核)の膨潤,溶解」
「DNAの不規則分解」
「炎症」
「内容物消失」
細胞の回復
・亜致死損傷回復(SLD回復,Elkind回復)
(R2.21)
1回の照射で死に至らなかった細胞の回復は
低LET放射線では多く,線量率効果がある
高LET放射線ではほぼない,線量率効果はほぼない
12時間程度で回復
*線量率効果
:低線量率の方が回復量は多いという効果
・潜在的致死損傷回復(PLD回復)
照射後の環境条件によって生存率の上昇が見られる回復
低栄養,低酸素,低pH,接触増殖阻害,定常増殖などの細胞を増殖抑制の起こる環境で発生
反対に通常修復されるPLDが修復されずに致死損傷として固定される場は高・低調液,カフェイン,βアラビノフラノシルアデニン,ヒドロキシウレア,ある種の抗がん剤などがある
1時間以内で回復するものと2~6時間で完了するものがある
・逆線量率効果
一部の細胞では特定の線量率(5mGy/min)でGブロックにより致死効果が上がる
生存率曲線
・標的説
・D0(平均致死量)
生存率を37%にするのに必要な線量
哺乳類は1~2Gy
・n(外挿地)
理論的な標的数
・Dg(見かけの閾線量)
回復能力を示す
0~5Gy
・生存率S=e^(-D/D0)
・低LETの肩より右部分,高LET
:1標的1ヒットモデル
・低LETの肩より左部分
:多標的1ヒットモデル
・LQモデル(直線2次曲線モデル)
(R4.16, R3.6.32, R2.22)
・生存率S=exp(-αD-βD2)
D:線量
α:1本の放射線で2本鎖切断が起こる
β:2本の放射線で2本鎖切断が起こる
→SLD回復に関係
αD=βD2のときの線量D=α/βとする(各組織・細胞毎の定数)
*白血病のモデルになる
・早期反応組織(がんを含む)
:α/βは大きい,肩は小さい
・晩期反応組織
:α/βは小さい,肩は大きい
・分割照射
:急性障害はやや強く出るが,晩発障害の減少と腫瘍抑制の向上が期待できる
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